火事

レイアウトの変更を行うということで、再びお花屋さんに行った。

打ち合わせをしていると、70〜80M先位の古民家から煙が上がる。
間には畑しかないので、古民家の様子はよくわかるかたちだ。
風向きがちょうどこちら側に来るかたちだったので、煙がもうもうと入ってきた。

「すごい煙だねぇ」

始めは皆火事だとは思わずに焚火だと考えていた。
まさか目の前で火事が起こるとは確率的に言っても考えにくいからだ。

しかししばらくして(どのくらいだろう?2〜3分くらいかな)
くすぶっていたような灰色の煙が、黒く変わりゴウッという勢いで火の手が上がった。
(ある瞬間から突然煙と火の勢いが変わった。)

「火事だ!」

社長さんが走り出した。

古民家から郵便配達人がバイクで出てきた。
何をしているんだろうかはわからない。

火の手はますます勢いを強めていく。
社長の奥さんが、消防に連絡を入れている。

しばらく見ていると古民家に社長さんが車で到着した。
郵便配達人も戻ってきた。二人で敷地に入っていき、
しばらくすると腰が90度くらい曲がったおばあさんが
一緒にかかえられるようにして出てきた。

とりあえず最悪の事態は免れたようだ。

しかし問題は終わったわけではない。この風の強さだ、
いつ隣家に飛び火するかわからない。

自分も何が出来るというわけではないが対面通行の通りを
小走りに現場近くまで向かう。

古民家の前で社長さんが手で×印を作っている。
危険だからこっちに来るなという合図だ。

奥さんは携帯を片手に、走り回って情報を集めている。
隣家(15Mくらいの距離の畑を隔てて)には人はいないという。

ほどなくして(いや結構な時間待ったような気がする。5分くらいか)
消防がサイレンを鳴らしながらやってきた、救急車1台、
消防車2台、先導車1台という構成だ。

ひとまず安心していると、奥さんが突然会社の方に走り出した。
何事か起ったのだ。自分も戻ってみる。

と、なぜか駐車場の隣の林から火が上がっていた。飛び火だ。

社員の人たちは文字通りバケツリレーで消火にあたっていた。
(バケツはお花をストックしておくためのものが何十も用意されていた。)

自分もそれに加わり、5回くらい火に水をかけた。
こちらにも消防の人たちがやってきて消化にあたってくれたので
ようやく火は鎮火して、一息ついた。

古民家もだいぶ火の手は収まったようだ。
というよりももう燃えるものが無くなってしまったのかもしれない。

火は燃えるものがあると、いくらでも形をかえ巨大化する。
想像をはるかに超える大きさと強さがあるので、経験にもとづいて
どうすればいいのかということが分からなくなり、呆然としてしまう。

恐らく津波の時もそうだったんだろうなとふと思った。


後で社長さんの話で分かったが、
出火当時の郵便配達人がバイクで出て行ったのは、周囲に知らせるためだったようだ。

郵便配達人は中におばあさんがいることを知っていたので、
中から連れてくることが出来たのだ。
社長さんは自分だけだったらわからなかっただろう、と言っていた。
油料理か何かをしていたのではないかという事だった。

家が無くなったのは残念だが、最悪の事態は免れたので良かったと言える。


しかし感心したのは社長さん奥さんをはじめ、従業員の人たちの行動力や
協力的な態度だ。

協力的というと意識があってのことのような感じになるが
無意識にそれぞれが非常時において自分のベストを行おうとしている
のにはとても感心させられた。僭越ではあるが。

2次災害が起きてはいけないので、
むやみに火の中に飛び込むようなことをしてはいけないが、
火事の可能性がある時点で素早い行動は出来たかもしれない。

現場に行き確認する。何もなければそれでいい。
火事であればすぐに消防に連絡を入れる。
それで一般人の出来ることはほぼすべてと言えるかもしれない。

何が出来るのか、何をしてはいけないのか。